注射の話

 当院ではあまり注射をしないようにしています。なぜなら皆さんが信じているほど「効く!」とは思わないからです。
いまだに「風邪をひいたら注射を一本うってもらったら治る」と信じている人がいるようです。
風邪には安静と栄養が一番です。薬は症状をやわらげるための「付け足し」です。そして注射は、うった直後は熱や咳が軽くなりますが、一時的です。
昔は、飲み薬や座薬、貼り薬などの研究が進んでおらず、注射に頼る部分が多かったのだと思います。
 しかし最近の医学の発達の中では、注射でなければだめという場合は、かなり減ってきました。たとえば・・・・

 1.薬が注射しか無い。例えばインスリンのように現在でも飲み薬が無い場合。(今、世界中でインスリンの飲み薬や貼り薬を研究中です)
   インスリンの必要な人は毎日注射しなければなりません。
 2.薬が飲めない場合。
   たとえば意識がない。麻酔中。口が開かない。吐き気がひどく、腹痛が激しい時などは注射にたよるしかありません。
 3.緊急時(早い効果を期待する時)
   ショック(血圧が非常に下がって危険な状態)、心肺停止直前時、激痛時、喘息重積発作時など、一刻を争う時には注射が最適です。
 このように、限られた場合のほかは、飲み薬、座薬、塗り薬、点眼薬、点鼻薬などで目的が達せられると思います。時々、胃が弱いから注射をとか、疲れているから注射をというかたがいますが、ナンセンスです。適当な胃薬、十分な安静と休息がとれればだいじょうぶです。
 
 ところで注射の欠点は
 1.痛いこと。薬の好きな子供はいても注射の好きな子供はいません。
 2.短時間しか効かない。ほとんどの注射は数時間しか効きません。
 3.飲み薬に比べて事故が起こりやすい。事前に皮内テストなどをしてもショックなどのまれな事故が起こることがあります。筋肉注射で筋肉や神経が傷ついたりすることもあります。

 このようなわけで、飲み薬がいろいろ研究され、目的に応じて用意されていますから、なるべく注射をしないことにこしたことはありません。どうしても必要なかたはこちらから申します。

  (続く)